「市街化調整区域は住宅を建ててはダメと聞いたけど、建築を可能にする裏ワザはあるの?」
土地の安い市街化調整区域に、何とか住宅を建築したいと悩んでいませんか?
今回の記事では、市街化調整区域に住宅を建築する裏ワザや活用方法についてまとめました。
くわえて、市街化調整区域のメリット・デメリットや開発許可の申請手順も解説します。
本記事を読めば、市街化調整区域の土地を安く購入して住宅建築ができる裏ワザを知ることができます。
- 市街化調整区域とは都市計画法に基づいて定められた都市化を抑制するエリア
- 市街化調整区域で建物を建築するには、土地の規模にかかわらず開発許可が必要
- 市街化調整区域に建築するメリットは土地が安い・都市計画税がかからない・騒音が少ないなど
自然環境が豊かな市街化調整区域に住宅を建築し、静かな暮らしを手に入れましょう。
市街化調整区域とは
市街化調整区域とは都市計画法に基づいて定められた都市化を抑制するエリアで、乱開発防止のために設定されます。
エリアを指定するのは、政令指定都市・中核市・都道府県などの大きな自治体です。
市街化調整区域に指定されると、住宅や商業施設の建築は原則的に認められません。
市街化調整区域で建築するには開発許可が必要
市街化調整区域で建物を建築するには、土地の規模にかかわらず開発許可を得なければなりません。
開発許可とは、建築など開発行為のために都道府県や政令指定都市から許可を得ることです。
駐車場・太陽光発電所など建物がない場合は開発許可が不要ですが、住宅を建築するためには必要です。
事前準備から許可を得るまでに半年から1年以上かかることが多いため、住宅を建設したいなら早めに準備をはじめましょう。
市街化調整区域に建築する裏ワザ5選
市街化調整区域に建物を建築する裏ワザを5つ紹介します。
自分が建築したい建物に適した方法を検討し、裏ワザをしっかりと活用しましょう。
農林漁業を営むなら許可が必要ない
農林漁業を営むものなら、市街化調整区域で住宅を建てるときに開発許可が不要です。
農林漁業を営むものとは、農作物の栽培や収穫・木の育成や伐採・水産動物の捕獲などをしている人のことです。
農林漁業を営むものが建築できる建物は、以下の通りです。
- 畜舎
- 蚕室
- 温室
- 堆肥舎
- サイロ
- 農林漁業者の住宅
ただし、検知肉事前協議が必要なケースがあるため、前もって自治体の役場に相談するのがおすすめです。
立地基準を満たしている土地に建築
都市計画法第34条11号に定められた立地基準を満たしていれば、住宅の建築を認められるケースがあります。
都市計画法第34条11号とは、都道府県・政令指定都市などが地域の実情に応じて特定の区域に住宅建築を認める制度です。
市街化区域と市街化調整区域の境目が、都市計画法第34条11号区域となります。
都市計画法第34条11号区域は、比較的安く土地が購入できてだれでも住宅の建築が可能です。
立地条件の詳細は、各自治体の役場や不動産会社に確認しましょう。
住宅利用が許可されている土地に建築
すでに住宅利用が許可されている場所なら建築が可能です。
ただし、建築できる条件は以下のように限られています。
- 店舗と住宅が一体になっている住宅兼用店舗
- 市街化調整区域になる前から住宅を構えている本家から分家した分家住宅
- すでに住宅が建築されている場所での建て替え
住宅兼用店舗とは、1つの建物の中に住宅と店舗があり双方が行き来できる物件です。
なお、住宅兼用店舗と住宅併用店舗の違いは、物件の中で双方が行き来できるかどうかになります。
分家住宅とは、市街化調整区域として指定される前から住宅だった本家の世帯が分かれ、分家として新たに必要とする住宅です。
限定された条件ではあるものの、すでに住宅利用が許可されている場所なら煩雑な手続きがある程度は省けます。
すでに開発許可を取っている土地に建築
すでに開発許可が下りている土地なら住宅が建築できます。
たとえば、以前にディベロッパーが開発許可を取得した土地などが有力な選択肢です。
ただし、低層の戸建て住宅しか建築できないなどの条件があるため注意しましょう。
開発許可が下りている土地がないかどうかは、自治体の役場に確認を取りましょう。
市街化調整区域の裏ワザ的活用方法
市街化調整区域の裏ワザ的な活用方法について解説します。
住居以外にもさまざまな活用方法がありますので、自分に最適な選択肢を検討しましょう。
ソーラーパネルを設置して太陽光発電
建物の造成を必要としない太陽光発電なら、自治体の開発許可なしに設置できます。
造成なしのフィールド型太陽光発電の設置は、建物の建築には当てはまらないために許可が不要です。
敷地面積が広く、周辺に大きな建物がないため太陽光発電に向いています。
発電した電気を売却できることや、運営に手間がかからないことが太陽光発電所のメリットです。
ただし、太陽光発電の収益性・利回りはあまり高くありません。
1,000坪の太陽光発電所の月間売電収入は65万円ほどが相場です。
ソーラーパネルの寿命も勘案し、長期スパンで黒字化できるように計画を立てましょう。
駐車場
駐車場なら開発許可なしに土地を活用できます。
市街化調整区域は電車やバスの駅から遠く、移動手段として車を利用する人が多い地域です。
そのため、月極駐車場は周辺ニーズをつかみやすく、リーズナブルな初期費用で収益を上げやすい活用方法です。
周りに競合する駐車場がないかチェックし、周辺ニーズを獲得して高収益を実現しましょう。
社会福祉施設や老人ホーム
社会福祉施設は、条件によっては建築が可能な建物です。
社会福祉施設とは、社会福祉法人などが運営する特別養護老人ホーム・認可保育所・認定こども園などの公的施設です。
一方、グループホームと呼ばれる介護施設の建築は原則不可となっています。
建築の条件は自治体ごとによって異なるため、事前に役場でしっかりと確認を取りましょう。
墓地
市街化調整区域を墓地・霊園として活用するケースが近年は増えています。
自然が多く、人が少ないため墓地・霊園を建築する環境に適しているからです。
ただし、墓地・霊園は貸主から簡単に契約解除ができない点に注意が必要です。
数十年以上の契約になることがほとんどで、土地の転用がほぼ無理なため長期スパンで計画を立てるのがおすすめです。
墓地・霊園の建設は自治体によって大きく基準が異なりますので、前もって問い合わせておきましょう。
市街化調整区域に建築するメリット
市街化調整区域に建築するメリットは以下の通りです。
特徴をしっかりと把握し、メリットを上手に活用しましょう。
土地が安く手に入る
市街化調整区域の大きなメリットは、土地の価格が安いことです。
土地が安い理由は以下の通りです。
- 建築・建て替えにさまざまな条件が必要
- 市街化区域から離れており不便
- 駅から遠く交通の便が悪い
- 水道・ガス・電気などのインフラが整備されていない
価格としては、おおよそ7割~8割で購入できるケースが多いとのことです。
できるだけ広い土地に住みたい人や、リーズナブルに土地を手に入れたい人におすすめです。
都市計画税がかからず固定資産税がリーズナブル
市街化調整区域に住宅を建築すると、都市計画税がかからず固定資産税が安くなります。
固定資産税とは、所有している土地・建物の評価額に課せられる税金です。
市街化調整区域は評価額が低いため、市街化区域よりも固定資産税が安くすみます。
都市計画税とは都市計画区域内にある土地・住宅に対して事業費用に充てるためにかける税金ですので、市街化調整区域では不要です。
できるだけ固定資産税・都市計画税を安くして、ランニングコストを押さえたい人におすすめです。
騒音が少ないため静かに暮らしたい人向き
市街化調整区域は周辺に住宅がなく、静かな環境で暮らせることがメリットです。
ビル・商業施設・近隣住宅がほとんどありませんので、人が発する騒音に悩まされずにすみます。
交通量も少なく、道路がこれから増える見込みもありません。
近隣住宅と距離が離れていれば、自分が家の中で大きな音を立てることもできます。
たとえば、大音量で音楽を聴いたりギターなどの楽器を演奏したりしても迷惑になりません。
市街化調整区域に建築するデメリット
市街化調整区域に建築するデメリットを解説します。
前もってデメリットをチェックしておき、トラブルや不利益を賢く回避しましょう。
改築・建て替えに許可が必要
市街化調整区域での改築・建て替えにはさまざまな制限があり、原則的に許可が必要となります。
たとえば、大規模なリノベーションも自治体から許可を得なければなりません。
大がかりなリノベーションは許可が必要ですが、浴室・トイレ・キッチンなど住宅設備の一部交換や外壁塗装は許可なしに行えます。
中古物件を購入してリノベーションを検討しているなら注意しましょう。
インフラがあまり整っていない
市街化調整区域はインフラが整っていない場所が多く、最終的な費用が大きくなってしまう可能性があります。
インフラとは、水道・ガス・道路・電気のような生活を支える基盤です。
インフラが整っていないと、自分で水道を通したり電気を引いたりする必要が出てきます。
インフラの整備具合がどの程度か、事前に不動産会社や役場に確認しておきましょう。
生活に必要な店舗や施設が遠い
商業施設・娯楽施設が近くにないのは大きなデメリットです。
コンビニ・スーパー・駅・学校・病院なども遠方になる可能性が高いです。
そのため、住宅を建築するなら前もって該当地域の周辺環境を把握しておきましょう。
なお、ネットスーパーやオンラインショッピングを利用すれば不便さをある程度カバーできる可能性があります。
配達可能地域かどうかを、公式サイトや問い合わせで事前にチェックしておくのがおすすめです。
売却するのが困難
市街化調整区域の物件は売却が難しく、買主が見つかるまでに時間がかかる可能性があります。
なぜなら、建て替え・改築に許可が必要だったり、インフラが整備されていなかったりとさまざまな制限があるからです。
一般的な土地の場合、不動産会社の査定依頼から引き渡しまで約3ヶ月~6ヶ月かかります。
しかし、市街化調整区域はさらに時間がかかる可能性が高いため、売却するなら早めに準備をはじめましょう。
住宅ローンの審査通過が難しい
住宅を建築するときに、住宅ローンの審査に通過できない可能性があります。
住宅ローンは、原則として購入する不動産や建築する住宅が担保となります。
市街化調整区域の土地は価値が低く、売却が難しいため住宅ローンの審査通過のハードルが高いです。
また、金融機関によっては市街化調整区域を住宅ローンの対象外としているところもあります。
住宅ローンを申し込むなら、前もって審査の対象に含まれているかどうか確認しましょう。
市街化調整区域に建築する申請手順
市街化調整区域の開発許可の申請手順は以下の通りです。
- 自治体へ事前相談
- 自治体へ事前協議
- 都市計画法34条に当てはまる建物であることの確認
- 開発審査会が開かれる
- 都市計画法43条の許可が下りる
- 建築確認申請を行う
自治体への相談をすれば、その後の申請手続きについても教えてもらえます。
開発審査会とは、都市計画法に基づいた開発許可や審査請求などを行う機関です。
開発審査会から許可が出ると住宅の建築ができるようになります。
まずは自治体に相談しよう
市街化調整区域への建築を行うなら、最初に自治体の役場に相談しましょう。
申請方法や必要書類は自治体によって微妙に異なります。
開発許可のルールは非常に複雑なので、役場への相談は建築士に任せるのがおすすめです。
また、相談に行くときは事前に役場の公式サイトから情報を確認しておきましょう。
申請のための必要書類
開発許可を得るための必要書類は以下の通りです。
- 住民票の写し
- 建築理由書
- 確約書
- 登記事項証明書
- 建築行為施行同意書
- 他の法令による許可書や同意書
- 設計図書
- 公図の写し
事前相談や協議のときに必要だと伝えられた書類も、しっかりと用意しておきましょう。
スムーズに申請手続きを進めたいなら、建築許可申請に詳しい行政書士に依頼するのがおすすめです。
行政書士の依頼にかかる費用は、数万円~10万円ほどを見積もっておいてください。
市街化調整区域に関するよくある質問
市街化調整区域に関するよくある質問を解説します。
前もって疑問を解消し、トラブルを回避してスムーズに建築を進めましょう。
市街化調整区域に建築できない建物は何?
市街化調整区域は市街化を抑制する地域なので、住宅・商業施設が原則的には建築できません。
住宅や商業施設の建築をするには、自治体の許可が必要です。
一方、都市計画法第34条に定められた住宅兼用店舗・分家住宅・既存住宅の建て替えと、農林漁業を営むものの住宅や社会福祉施設は建築できます。
市街化調整区域はだれが決めるの?
市街化調整区域は県知事や市長が決定します。
都市再開発方針などの広域的なものは県知事、地区計画などの小さなものは市長の判断に委ねられます。
市街化調整区域の土地が安い理由は?
市街化調整区域が安い理由は以下の通りです。
- 周辺の商業施設・娯楽施設がない
- インフラの整備が整っていない
- 住宅の建築に開発許可が必要
- 駅から遠く、立地が悪い
土地が安く購入できるので、駐車場や墓地として活用するなら高い利回りが見込めます。
市街化調整区域に建築する裏ワザで静かな暮らしを手に入れよう!
- 市街化調整区域とは都市計画法に基づいて定められた都市化を抑制するエリア
- 市街化調整区域で建物を建築するには、土地の規模にかかわらず開発許可が必要
- 市街化調整区域に建築するメリットは土地が安い・都市計画税がかからない・騒音が少ないなど
市街化調整区域とは、都市計画法に基づいて定められた都市化を抑制するエリアです。
土地が安く手に入る反面、住宅建築には開発許可が必要で煩雑な手続きが発生します。
今回の記事では、市街化調整区域に建物を建築する裏ワザや活用方法についてまとめました。
また、市街化調整区域に住宅を建築するメリット・デメリットについても解説しました。
市街化調整区域に住宅を建築する裏ワザを活用して、静かな環境での生活を手に入れましょう。