「不動産クラウドファンディングが気になっているけど、税金はかかる?」
「不動産クラウドファンディングで税金がかかる場合、確定申告は必要?」
不動産投資や不動産クラウドファンディングについて気になっている人であれば、上記のように悩んでいる方も多いでしょう。
税金の仕組みについて理解していないまま始めると、必要以上に税金を支払ってしまったり、還付金を受け取れなかったりと税金面で損をしてしまうリスクが高いです。
不動産クラウドファンディングでは、ほんの数%の収益差が利益となるか損失となるかを分けるため、税金面の正しい知識を身に着ける必要があります。
そこで本記事では、不動産クラウドファンディングでかかる税金の種類や確定申告が必要な人の特徴、税金が還付されるケースなどを解説します。
記事後半では、確定申告の手順や確定申告書の書き方なども解説するので、確定申告が必要になる可能性のある方はぜひ参考にしてください。
- 不動産クラウドファンディングの分配金には税金がかかる
- 不動産クラウドファンディングの分配金は雑所得として総合課税に分類される
- 雑所得が330万円未満の人は、確定申告をして税金の還付を受けられる
不動産クラウドファンディングの分配金には税金がかかる
結論から言うと、不動産クラウドファンディングの分配金には税金がかかります。
不動産クラウドファンディングは所得税・住民税の対象となり、雑所得として総合課税に分類されます。
以下の見出しで、雑所得や総合課税はどのようなものなのか、不動産クラウドファンディングはどのように税金が課せられるのかを確認していきましょう。
不動産クラウドファンディングの分配金は雑所得になる
不動産クラウドファンディングは、出資先の不動産運用会社から運用によって発生した利益の一部を分配金として配られます。
国税庁によると、分配金は雑所得として扱われるため、不動産クラウドファンディングの分配金は税金がかかります。
しかし、不動産クラウドファンディング会社から分配金を受け取る際に源泉徴収されるので、基本的には確定申告が不要です。
例外として、後述する「不動産クラウドファンディングで得た利益に対して確定申告が必要な人」に当てはまる場合は確定申告が必要です。
分配金にかかる税率は所得税および特別復興所得税15.42%、地方税5%を合わせた20.42%が雑所得として計算されます。
ここで一度、利益に対してどのくらい所得税がかかるかシミュレーションしてみましょう。
年間利益が15万円の場合 |
15万円×20.42%=3万630円 |
上記のように、15万円の利益に対して3万630円の雑所得が発生するため、自動的に不動産クラウドファンディング会社から3万472円が引かれた11万9,370円が手元に入ってきます。
なお、雑所得は損益通算が可能です。
不動産クラウドファンディングで発生した利益分から仮想通貨投資といった他の事業で発生した損失分を引けるので、かかる税金が少なくなるメリットがあります。
不動産クラウドファンディングの分配金は総合課税の対象
所得税・住民税の課税方法は、総合課税と分離課税の2つに大別されますが、不動産クラウドファンディングの分配金は総合課税の対象となります。
総合課税は1年間を通してほかの事業で発生した利益のすべてを合算し、その利益額に応じて税率が高くなる「超過累進課税」で計算されます。
超過累進課税の税率は以下の通りです。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円未満 | 5% | 0円 |
195万円以上~330万円未満 | 10% | 97,500円 |
330万円以上~695万円未満 | 20% | 427,500円 |
695万円以上~900万円未満 | 23% | 636,000円 |
900万円以上~1,800万円未満 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円以上~4,000万円未満 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
ここまでの説明で、「不動産クラウドファンディングは20.42%が源泉徴収されるんじゃないの?」と考えた方も多いでしょう。
実は、不動産クラウドファンディングでは「確定申告が面倒くさい」と考える投資家向けに、不動産クラウドファンディング会社が投資家の代わりに納税してくれる仕組みを採用しています。
そのため、区分は総合課税ですが、実際は「所得税および特別復興所得税15.42%、地方税5%」の20.42%の税率が業者から源泉徴収されます。
なお、不動産クラウドファンディング会社が納税してくれる場合、0~330万円未満の分配金所得でも税率は20%に区分されます。
20.42%の税率がかかる場合、本来課税されるはずであった金額よりも払い過ぎになる可能性があるので、この場合は還付金を受け取れます。
還付金については、「確定申告をすることで税金が還付されるケースとは?」で詳しく解説しているので、そちらをご覧ください。
不動産クラウドファンディングで得た利益に対して確定申告が必要な人
不動産クラウドファンディングで得た利益に対して確定申告が必要な人は、以下の通りです。
- 雑所得の合計が20万円を超える人
- もともと確定申告が必要な人
雑所得の合計が20万円を超える人
年間の雑所得の合計が20万円を超える場合には、確定申告が必要です。
国税庁によると、雑所得に分類される所得は次の通りです。
- 国民年金・厚生年金などの公的年金
- 原稿料
- 講演料
- 印税
- 放送出演料
- 貸金の利子
- 生命保険の年金
- 副業収入
- ネットショッピングの収入
- FX・仮想通貨投資の収入
不動産クラウドファンディングで得た分配金に加えて、上記の所得があれば合算します。
分配金については、源泉徴収前の所得を計算しましょう。
公的年金は確定申告が不要なので、公的年金がある場合は含めずに計算します。
もともと確定申告が必要な人
雑所得の収入にかかわらず確定申告が必要な人は、以下の通りです。
- 給与の収入が2,000万円を超える場合
- 給与とは別の所得が20万円を超える場合
- 給与で源泉徴収額の徴収猶予や還付を受けた場合
上記の他にふるさと納税や医療費控除、住宅ローン控除を利用する場合は、確定申告を行うと課税対象の所得が減少するため、納税額が減少します。
もともと確定申告が必要な方や、控除を利用したい方は確定申告を行いましょう。
確定申告をすることで税金が還付されるケースとは?
還付金とは、確定申告の際に納めすぎた税金を納税者に返還されるお金です。
不動産クラウドファンディングにおいて、年間所得が330万円を下回る場合、確定申告をすると還付金を受け取れます。
超過累進課税の税率は、表で記載されている税率に加えて2.1%の税率が加算されます。
そのため、330万円~695万円の区分では税率が22.1%となるため、330万円未満の所得においては還付される計算です。
ここで一度、確定申告をする場合としない場合に分けて計算してみます。
前提として、雑所得100万円とします。
確定申告をしない場合 |
雑所得:100万円×20.42%=20万4,200円 |
確定申告をする場合 |
雑所得:(100万円-48万円)×5%=2万6,000円 |
所得税の基礎控除額が48万円なので、確定申告をすると100万円から48万円を引かれた52万円に対して5%の税率がかかります。
確定申告をすることで、17万8,200円もの差額が発生するため、所得が330万円を下回る場合は確定申告をしましょう。
不動産クラウドファンディングで確定申告する流れ
確定申告が必要なのは、雑所得の金額が20万円を超える人やもともと確定申告が必要な人、還付金を受け取りたい人などです。
ここでは、不動産クラウドファンディングで確定申告をする流れを、以下の4ステップで解説します。
- 雑所得の金額を確認する
- 必要書類を準備する
- 確定申告書を記入する
- 確定申告書を税務署へ提出する
STEP1:雑所得の金額を確認する
まずは、雑所得の金額を確認します。
不動産クラウドファンディングで所得がある人の場合、他の雑所得があるケースも多いので、必ずすべての雑所得を合算しましょう。
同じ雑所得の場合、損益通算が必要なので、仮に不動産クラウドファンディングの所得が100万円あった場合でも、他の所得でマイナス80万円以上であれば確定申告は不要です。
確定申告の必要があるかどうかを知るために、雑所得の金額を確認しましょう。
STEP2:必要書類を準備する
続いて、確定申告に必要な書類を準備します。
確定申告に必要な書類は、以下の通りです。
必要書類 | 概要 |
本人確認書類 | 身分証明書やマイナンバーカードなど |
源泉徴収票 | 会社の給与証明 ※勤め先が発行 |
支払調書 | 不動産クラウドファンディングの利益・損失額の証明 ※運用会社が発行 |
各種控除証明書 | 生命保険控除や医療費控除など、控除の対象となるもの |
銀行口座が分かるもの | 還付を受ける場合は必要 |
基本的な考え方としては、税務署は「申告する所得に偽りはないか」を確認したいため、それぞれの所得を明らかにするために上記のような書類が必要です。
確定申告の優遇措置として、青色申告特別控除を受けると最大65万円の所得控除を受けられるので、確定申告をすることが決まった場合には早いうちに税制優遇についても理解しておきましょう。
STEP3:確定申告書を記入する
確定申告書は、税務署や国税庁のホームページから入手できます。
最近は国税庁の確定申告書等作成コーナーを利用すれば、インターネットで簡単に書類を作成できるようになっています。
確定申告が初めてで分からないことが多いという方は、直接税務署に行くと役員が親切に教えてくれるでしょう。
STEP4:確定申告書を税務署へ提出する
確定申告は、2月16日から3月15日の間に所轄税務署で行います。
申告書の提出方法は、次の3つです。
- 税務署に持参する
- 郵送する
- e-taxで提出する
書き方が分からない場合や不明点を質問したい場合は、税務署内で確定申告書を書くこともできます。
郵送して書き方が間違っていれば再提出を求められるので、書き直しが面倒な場合には税務署に行くと良いでしょう。
申告期間であれば近くに役員がいるので、すぐに質問できる環境が整っています。
しかし、申告期間は多くの納税者が税務署に訪れるため、混雑する可能性が高いです。
そこでおすすめなのは、e-taxで提出する方法です。
e-taxはスマホから申請できる上に、税務署が営業していない土日や夜間でも提出できます。
ただし、e-taxを利用するにはマイナンバーカードの取得といった事前準備が必要なので、申告期間に焦って準備するのではなく前もって準備しておきましょう。
【初めての方必見!】確定申告書の書き方を分かりやすく解説
ここでは、確定申告書の書き方を次の5ステップで解説していきます。
前提として、不動産クラウドファンディング会社から分配金100万円受け取り、うち20万4,200円が源泉徴収されたとします。
- 「収入金額等」に収入を記入する
- 「所得金額等」に所得を記入する
- 「所得から差し引かれる金額」に控除額を記入する
- 「税金の計算」に源泉徴収税額を記入する
- 「その他」に控除額を記入する
不動産クラウドファンディングの分配金は雑所得なので、「収入金額等」の「雑」の「その他」に「1,000,000」と左寄せに記入します。

続いて、「雑」の「その他」に「1,000,000」と左寄せに記入します。

「所得から差し引かれる金額」では、社旗保険料や生命保険料などの控除額を記入します。
基礎控除も忘れないように記入しましょう。

「税金の計算」では、「源泉徴収税額」に「204,200」と記入します。

「その他」では、配偶者控除や青色申告特別控除などの控除額を記入します。
青色申告特別控除は要件を満たせば最大65万円の控除を受けられるので、税額を軽くするためにも青色申告特別控除の申請は忘れず行いましょう。

今回は不動産クラウドファンディングのみ計算に入れましたが、本来は給与所得や他の雑所得も計算に入るので、忘れず記入しましょう。
まとめ|不動産クラウドファンディング税金
本記事では、不動産クラウドファンディングの分配金には税金がかかるのかという点から、税金の区分や確定申告が必要な人、確定申告の手順などを徹底解説しました。
税金はルールが複雑なので面倒に感じる方も多いですが、ルールを知っておくと控除を利用して不動産クラウドファンディングの収入を増やすことができます。
また、知らず知らずのうちに不必要な税金を納めている方も多いですが、還付を受けられることを知らずに損をしている方も少なくありません。
誤った申告をしてしまったり、申告期間を過ぎてしまった場合には遅延金が発生する場合もあるので、税金ルールを正しく知ることが重要です。
税金ルールを知れば怖いものが1つ無くなるので、自信を持って不動産クラウドファンディングに挑戦してみましょう。